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税理士による相続人にやさしい相続税のページ (平成26年以前)
4. 相続税の計算の流れ
(1) 遺産総額の計算(各相続財産の評価)
相続税の全体像を把握していただくのが目的ですので、シンプルな計算例にしています。
((具体例)) |
(単位:万円) | 路線価・時価 | 相続税評価額 |
①(+)本来の財産 | 自宅用の土地 | 1億円 | 2000万円 (*1) |
居住用の建物 | 3000万円 | 1000万円 (*2) | |
現預金、株式など | 6200万円 | 6200万円 (*3) | |
小 計 | 1億9200万円 | 9200万円 | |
②(+)みなし財産 | 生命保険金他(非課税枠控除後) | 6000万円 | |
③(-)非課税財産 | (便宜上なし) | ||
④(+)相続時精算課税制度に係る贈与財産 |
(便宜上なし) | ||
⑤(-)債務・葬式費用 | (便宜上なし) | ||
⑥(+)相続開始前3年間の生前贈与財産 |
(便宜上なし) | ||
合 計(=遺産総額) | 1億5200万円 |
(*1) 居住用の小規模宅地の減額(80%)適用後の金額、相続税の申告書を提出することが適用要件となります。申告書を提出しない場合には、未申告となり、課税価格は1億円で計算されますので、多額の相続税を納めることになります。また、減額は最高が80%であり、条件によって少なくなります。
(*2) 固定資産税評価額
(*3) 株式の場合は一定の評価方法がありますがここでは考慮しておりません。
(2) 課税遺産総額の計算
((具体例))
遺産総額から、基礎控除額を控除して、課税価格を計算します。
家族構成 甲:被相続人(70歳)、乙:配偶者(65歳)、子供AおよびB(共に20歳以上)
基礎控除額の計算は、次のとおりです。
5000万円+1000万円×法定相続人の数(3人)= 8000万円
(改正後は、3000万円+600万円×3人=4800万円となる予定です)
課税遺産総額 = 1億5200万円 - 8000万円 = 7200万円
(改正後は、1億5200万円-4800万円=1億400万円となる予定です)
(3) 相続税の総額の計算
((具体例))
課税遺産総額7200万円を法定相続分で取得したと仮定して、税額を計算します。
(法定相続分に よる取得額) |
(仮の相続税額) | ||
乙 (1/2取得) |
3600万円 | 3600万円×20%-200万円 | = 520万円 |
A (1/4取得) |
1800万円 | 1800万円×15%- 50万円 | = 220万円 |
B (1/4取得) |
1800万円 | 1800万円×15%- 50万円 | = 220万円 |
相続税の総額 | = 960万円 |
相続税の速算表
法定相続分に応ずる 各人の取得金額 |
税 率 |
控 除 額 |
1000万円以下 |
10% |
- |
3000万円以下 |
15% |
50万円 |
5000万円以下 |
20% |
200万円 |
1億円以下 |
30% |
700万円 |
3億円以下 |
40% |
1700万円 |
3億円超 |
50% |
4700万円 |
(4) 各相続人の相続税の計算
((具体例))
各相続人の実際の取得財産を次のとおり取得したと仮定して、総額を按分計算します。
乙 (自宅用の土地建物と現金他) 合計で 4000万円 (割合 55.6%)
A (現金の一部と生命保険金) 合計で 1800万円 (割合 25.0%)
B (現金の一部と生命保険金) 合計で 1400万円 (割合 19.4%)
各相続人の課税遺産額合計 = 7200万円
相続税の総額960万円を、上記の割合で按分計算します。
(各相続人の相続税額)
乙 960万円 × 55.6% ≒ 533万8千円
A 960万円 × 25.0% ≒ 240万
B 960万円 × 19.4% ≒ 186万2千円
合 計 960万円
ここで、配偶者である乙には、税額の軽減措置があり、次のように取り扱われ、乙の相続税額は53万円になります。乙については、たとえ相続税額がゼロであっても、この配偶者の軽減措置の適用を受けるためには、相続税の申告書を提出することが必須の要件になっています。
(配偶者に対する相続税額の軽減措置)
① 配偶者の法定相続分3600万円(A)と1億6000万円(B)のいずれか低い金額
② 配偶者の課税価格4000万円(C)
上記の①と②の低い方の金額の相続税額に相当する部分について、税額軽減されます。
具体的には、3600万円(A)と1億6000万円(B)のいずれか低い金額3600万円と
配偶者の課税価格©4000万円のいずれか低い方で、3600万円相当額部分の相続税が税額軽減されます。
配偶者の税額軽減額=相続税の総額 960万円×(3600万円/7200万円) = 480万円
したがって、配偶者の納付すべき税額は、533万-480万円= 53万円となります。
(この納付税額53万円は、法定相続分を超えて取得した金額400万円(4000万円-3600万円)に見合う相続税になります。)
(5) 相続税の申告書の提出と納付
以上の計算手続きを終えたのち、相続税全員が相続税の申告書に記名・押印し、主として次の書類を添付して、被相続人の納税地の税務署長宛てに提出します。
(主な添付書類)
① 被相続人の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)および相続人の戸籍謄本(相続開始の日から10日を経過した日以降に作成されたもの)。なお、被相続人の戸籍謄本は、出生から死亡時までのすべてが必要になります。被相続人のご存命中に最近までの戸籍謄本を準備されるようお勧めします。
② 遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
(注) 遺産分割協議書には、自署および実印の押印が必要です。
③ 相続人全員の印鑑証明書
④ 土地や家屋の固定資産税評価証明書等
⑤ 土地等の評価証明書
(土地等の所在略図、地形図なども添付)
⑥ 預貯金等の残高証明書(相続開始日現在のもの)
⑦ 被相続人の略歴書など
上記のほか、財産の種類に応じてそれぞれ残高明細書や評価計算書、相続人に未成年者がいる場合には特別代理人選任に関する書類、生命保険金などの支払通知書など多くの書類の準備が必要になります。また、これらの書類がないと、いくら専門家であっても、正しい相続税の申告書を作成できなくなり、事後の税務調査で否認されるなどのケースが出てくることになります。
このホームページをお読みいただき、将来の被相続人の方が、相続人が遺産相続で不要な心労やトラブルを抱え込まないようお考えいただければ幸いです。生前におけるしっかりした準備こそが円満な相続をお約束いたします。そして、円満な相続こそが、故人となられた方の尊厳を高めることにつながります。もう少し付け加えますと、円満な相続をお考えになって、公正証書による遺言書に心のこもった付言を残すことが、財産を子孫に残していかれる方の義務と考えます。